【書評】スペキュラティヴ・デザイン

 

年の瀬に読みたかった本を消化していたのですが、とても面白かったので久しぶりに書評を書いて見ました。

 

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。?未来を思索するためにデザインができること

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。?未来を思索するためにデザインができること

  • 作者: アンソニー・ダン,フィオーナ・レイビー,久保田晃弘,千葉敏生
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2015/11/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 

個人的に SF のまだ存在しない技術や世界設定をもとに「人とは何か / この世界とは何か」みたいなことを、あの手この手で思考実験するところが好きなのですが(時代によってニュアンスが変わったりするのですが、Speculative Fiction と呼んだりもします)、そんな Speculative(思弁的)な試みを、小説や映画ではなくデザイン上で行ってみるという最近の潮流について、この本では数々の事例とともに紹介しています。

 

(以下、絵を交えつつ紹介)

 

f:id:theodoorjp:20151231185608p:plain

冒頭の、既存のデザインとスペキュラティヴデザインを比較する表が分かりやすいです。こうやって見ると、如何に今までのデザインがコマーシャルな世界から生まれるオプティミスティックな表現であったのかと思います(あたり前のことではありますが、、)

 

f:id:theodoorjp:20151231185614p:plain

今まで見たことのある、あんな作品やこんな作品がたくさん登場しており、それらに共通する文化的な背景をようやく理解することができました。(個人的には動物と人間がバイオ技術により、器官を共有する "犬呼吸器" という作品が好きです)

 

f:id:theodoorjp:20151231185619p:plain

今までもフィクションをともなったデザインというのは色々あるけれど、その中でも批評を伴いながら問題を提起していくスペキュラティブデザインの特徴を、分かりやすく説明されています。

 

--

 

自分もよく「what-if(もしも 〜 なら)」というテーマで制作することが多いのですが、そういったときにフィクションが上滑りせず説得力を持たせるのには、どうすれば良いかよく悩みます。

 

そういったときの考え方など、多くのヒントを得ることができました。(今まで作ったものも、この本を先に読んでいたらもう少しアウトプットが変わったかも??)

 

年を越える前に、こういった文脈におけるものづくりのパースペクティブや、考え方を理解することができて良かったです。

 

デザインに限らず、バイオアートや先端技術を使った表現、またデジタルにおいてインタラクティブな作品とはまた違った表現を考えたい人に、とてもオススメな内容でした。